日時:2016年8月10日(水)?12日(金)
場所:
ウィル愛知(愛知県名古屋市)
1日目:8月10日(水)
正会員32名、ボランティア・賛助会員7名が参加しました。
「この一年間、日韓交流や裁判支援で社会の注目を集め、JVTへの評価と期待が高まっている」という代表挨拶の後、まずは近況報告。
通勤や学習指導、同僚との関係作りで、悩んでいることや工夫していることなどを出し合いました。
人数が多いので、これだけで1時間以上・・・。
長いながらも、あっという間でした。
その後、三つの分科会に分かれての協議。
第一分科会 「視覚障害教師の児童・生徒理解」(参加者8名)
生徒の近くに行って、個別に声をかけたり、授業以外の時間に生徒と対話するなど、視覚障害教師ができることに積極的に関わり、クラス全体を見渡すとか、提出物の確認など、視覚障害では難しいことは、視覚障害のない同僚に依頼し、積極的な協力関係を築いていくことが大切ということなどが出されました。
第2分科会 「情報機器の活用」(参加者7名)
全盲生徒へのiPhone指導や、文字認識ソフト(OCRソフト)の活用、音声通話ソフト「Skype」を活用した視覚障碍者へのIT支援などについて情報交換されました。
第3分科会 「職務を円滑に進めるための視覚障害教師の人間関係」(参加者7名)
視力低下があったときの気持ちの整理の仕方や、補助具の活用、訓練施設の有効な活用、視覚障害のある仲間との情報交換やネットワーク作りなどについて、互いの体験談なども踏まえて話をしました。
分科会に続いて行われたのは、盲導犬ミニ講座。
盲導犬を新たに取得したJVTメンバーがいたことから、盲導犬訓練師のお話しを伺うこととなりました。
どうすれば盲導犬を取得できるか、費用がどれくらい必要か、盲導犬と一緒に泊まり込みで行う共同訓練の内容、訓練施設卒業後の犬のケアの仕方などについて、聞かせていただきました。
夕食後は、情報交換・相談会。
最初の近況報告で語りつくせなかった人、もっと具体的な情報を他の会員から聞きたい人が、声を出し合いました。
9時近くまで、活発な議論が続きました。
2日目:8月11日(木)
1 教材紹介・授業のアイディア持ち寄りコーナー
以下のような教材が紹介されました。
・全盲教師が独力で点字の図形を編集する方法
・音声編集ソフトを使ったオリジナル音声CD作りの方法
・携帯用点字電子手帳「ブレイルセンス・オンハンド」と、バッテリー内臓の小型スピーカーを活用して、授業で音楽を再生・活用する方法
・点字つき百人一首及び各種カルタと、遊び方の紹介。
視覚障害を補う工夫や、視覚障害の生徒が学習を深めるのを支援する教材を、広く知ることができました。
2 講演 「雇用分野における差別禁止と合理的配慮について−視覚障害教師の場合を中心として ?」
講師 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター特別研究員 指田 忠司 氏
概ね、以下のような内容で、講話をいただきました。
1 「障害を理由とする差別」の法的取扱い
(1)国際人権法における差別禁止
(2)日本国憲法第14条の平等原則
(3)差別禁止に向けた複数のアプローチ
2 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)
(1)法律の特徴
(2)差別禁止義務について
(3)合理的配慮提供義務について
(4)行政機関の役割
(5)障害当事者の役割
3 障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)
(1)法の沿革と特徴
(2)障害者権利条約の批准と障害者雇用促進法の改正
(3)差別禁止
(4)合理的配慮の提供義務
4 教員の雇用に関する特別の考慮点
(1)雇用主が公的機関か、民間(私立学校)かによって異なる
(2)中心的な職務の範囲が教員免許によって確定されている
(3)公務分掌など、教育活動の付随的職務が課されている
(4)職務の遂行にあたり、教員の個性、人格が反映しやすい
(5)勤務時間、責任範囲などからみて、通常の賃金労働者としての性格が変容している
5 まとめに代えて−今後の課題
(1)教材、教具の開発の推進
(2)教科書、指導書データの提供
(3)視覚障害教師の教材づくりにあたっての著作権法上のバリアの克服
(4)ICT活用研修の実施
(5)障害理解を進めるための啓発活動(同僚、児童・生徒、保護者など)
(6)担当教科指導力の強化
3 参加者による模擬授業コーナーその1
画面読み上げソフトを活用したタイピング練習や、ラップのリズムに乗せて発音練習する英語の授業、視聴覚教材と触図を使った臨床医学各論の授業などの実践が紹介されました。
パソコンの音声ガイド、CDの音楽、手で触って分かる図形、聴診器の音のサンプル音源など、生徒を授業に引き込む教材や工夫がそれぞれにあって、大変参考になりました。そしてなによりも、全て具体的な紹介で、明日からの授業に、すぐにでも使える内容ばかりでした。
4 講演 「障がい者」と裁判
講師 大阪夕陽丘学園短期大学教授 川崎 和代
以下のような項目について、お話しを聞きました。
(1)憲法研究者が、障がい者の人権に深く関わり始めたきっかけについて。
(2)障がい者の裁判闘争の紹介
(3)今後の展望
5 参加者による模擬授業コーナーその2
保育実習や、ネイチャーゲームのワークショップ、小学校における外国語活動の授業など、会員全員が参加する模擬授業が行われました。日ごろ教師をしている参加者は、園児になったり小学生になったり、大学生になったりして参加しました。そして、終了後は、より良い実践になるように、みんなで意見や感想を出し合いました。
6 点字百人一首体験コーナー(2日目夜)
ここでは、教材紹介コーナーで登場した点字つき百人一首を使って、実際に「お坊さんめくり」や、百人一首のカルタ取りを実際に行い、大変盛り上がりました。
3日目:8月12日(金)
まずはじめに、会員有志により、ギリシャ神話「オルフェオとユーリリーチェ」の語りがありました。「読み聞かせ」ではなく、全て覚えた上で語られるお話は、聞く人の心に深くその情景を描きました。
続いて、総会が執り行われました。
活動報告や決算報告、次年度の活動方針などが確認されました。
最後に参加者全員が一言ずつ感想を述べ、研修総会が終了しました。初めて参加された方からは、「今まで受けてきたどの研修よりも、自分のこれからに対して有益だった」という感想が出されました。今回も、たくさんの方々の準備や支援により、大変充実した研修総会となりました。