障害者差別解消法が施行されて2か月、教育界においていじめや差別はどこまで改善されたのであろうか。
視覚に障害がある岡山短期大学准教授の山口さんは、何とか教壇に立ち続けたいと3月23日に地位保全を求めて岡山地裁に提訴したが、短大は4月1日付けで教壇から外した。
学生の飲食や居眠りを注意できないだけで教団から外すとは今時信じられない。今まで不適格と言われたことはないと多くの視覚障害大学教授から怒りの声が挙がっている。
視覚障害教師の会で調べたところ、26名の大学教員が全国各地で教鞭をとっている。
視覚障害は、情報障害。代わりに見てくれる人、情報支援機器、盲導犬などの力は借りるが、知識や経験、専門性を補って欲しいわけではない。
また学生を監督することは大学教員の主たる職務ではない。むしろ学生の協力を得ながら講義や研究、フィールドワークなどを進める方が両者にとって良い結果を得られている。
山口さんは農学博士を持ち、17年の大学教員キャリアもある視力が低下したからといって専門性を失ったわけではない。授業の客観的評価も学生の評判も高い。
3月28日からは、インターネット署名を開始、沢山の励ましのコメントが寄せられ本人と支援者に力を与えた。
4月23日からは、用紙による署名も開始し、5月末には、7000筆を超えた。
5月30日には文部科学省を訪問。記者会見に臨み、次いで高等教育局私立大学部に書名を渡して要請し、さらに大臣室に行き要請文を提出した。
私立大学部の担当者からは、「裁判中の個別の案件については成り行きを見守るしかないが、人権の尊重や障害者差別の解消については、国として確認されていることなので行政の立場で取り組んでいきたい。」との回答があった。
翌5月31日には岡山地裁で初公判があり、山口さん、水谷弁護士、清水弁護士の順で意見陳述をした。
山口さんは、授業は研究と一体で最も重要なもの。幼児教育を担う学生のためにも短大の教育理念からも障碍者差別の解消を求めると訴えた。
一報、裁判以外には救済の道はないのかと、政府各省に電話で問い合わせてみた。
一億総活躍社会を推進している内閣府、国連で障害者権利条約を批准した外務省、人権擁護を推進している法務省、改正障害者雇用促進法の運用指針を出している厚生労働省、そして、「人権教育の指導方法等の在り方についての第三次とりまとめ」を出している文部科学省に、行政はこのような人権侵害の問題が起こった時に「何をしてくれるのかと問い合わせた。
内閣府に電話すると、障害者施策担当官は1名しかおらず、個別の案件は、担当各省に聴いてほしい。
共生社会実現担当官は、障害者担当に聞いてほしい。内閣官房は話は聞くが回答はできない。具体的なビジョンはない。
大臣室はなぜか全員不在であった。障害についての知識もなく余りのお粗末さに驚愕した。
法務局の人権110番に電話すると、それは明らかに人権侵害である。合理的な配慮を要求するべきケースであると頼もしい回答であったが、では、法務省のどこに頼めば救済の道があるのかと聞くと急に声が変わって、私は相談を受けるだけで何もできない。どこに連絡すればよいかも知らない。意見があったことだけは記録に残しておく。とのことであった。これまたポーズだけの人権擁護かと愕然とした。カウンセラーを雇っているだけで実際に救済するための仕組みではないようだ。
また、厚生労働省も文部科学省も、裁判中であることを理由に「司法の判断が出るマでは手が出せない。」と慎重な姿勢であった。
政府挙げての取り組みであるはずなのに、救済する仕組みや相談を持ち込む窓口がない。そのため裁判するしかないのだが裁判中は何もできないと言われては、どうしようもない。
私たちは、初公判のあった5月31日に「豊かな共生社会を子どもたちへ… 山口雪子さんを支える会」を設立し、多くの賛同者を集めている。報道機関への働きかけも活発で新聞報道やテレビ報道もされている。
差別解消法が努力目標であったとしても共生社会への大きな目標を示してくれたことは事実である。罰則がなければ守れないというのでは情けない。進んで守っていくことが、持続可能な社会や共生社会の実現に近づく道であることを喚起していきたい。
以上