年末に韓国から若い視覚障害教師と大学生が来日(「青少年交流事業ニュース」第77号【2016年3月25日発行】より)

 今から4年前の全国視覚障害教師の会創立30周年を機に、海外の視覚障害教師の状況を知りたい、困っているなら応援したいとの思いで、韓国教師との交流を始めた。2013年12月末には、17名が訪韓し、初の日韓親善交流大会が実現、韓国側教師20名と念願の出会いを果たした。韓国教師会は、2009年に結成された新しい団体で、2006年の障害者雇用義務制度(日本では雇用促進法)の教員への適用開始により急激に会員を増やし約120名の会員がいる。ほぼ全員が7年に満たない新規採用の若い教師で、普通校と特別支援校で教えている。また、進んだインターネット社会を背景にして会員間の交流を図り、職場環境の改善を目指して活発に活動している。

 2015年4月に日韓文化交流基金の青年交流事業の話があり、日韓国交正常化50周年記念事業として、韓国から視覚障害教師と大学生40名を招くことになった。全盲で日本に留学し盲学校や大学を経て企業で働く経験をした通訳のオ・テミン氏と、その奥様でJICAの日本研修旅行を経験したソウル盲学校のキム・インヒ先生が、沢山の若者や教え子を日本に連れてきた。若いころの外国での交流経験がその後の人生に強い影響を与え、日韓両国の橋渡し役としての種を二人にまいたのだ。これが2015年1月の第2回に次ぐ、第3回の日韓親善交流研修となり、日韓合わせて関係者101名、訪問先での交流約90名という大規模なものになった。頼りになったのは、2回の交流大会の実施経験と、これまで積み上げてきた日韓両国教師の強い絆である。

 8日間の交流では、一生懸命覚えた日本語で果敢に話しかけてくる若者、日本の歌を日本語で熱唱する若者、堂々と発表し聴衆の心を掴んだ若者がいた。バスやホテル内はまるで韓国にいるようだったが、日本の若者も負けずに交流しようと頑張った。日韓両国の参加者全員が両国の言葉の渦の中で、精一杯時間を惜しんで交流した。「魚は20年分食べた気がする」、「津波体験の話はショックだった」など彼らの印象は、日本の風土や見学先の体験として心に刻まれたに違いない。

 日光江戸村では個別におかれた鍋を不思議に感じたり、駕に乗ったり、下町の人情劇を見て笑った。また本所防災館では、地震体験のない彼らに起震車で震度7の体験をしてもらったが、悲鳴を上げながらも真剣に取り組んでいた。

 宮古では前日の見学でショックを受けた崩れた防潮堤や体験者の話を胸に、被災地のみなさんに楽しんでもらおうと一生懸命歌う姿が印象的だった。会長のキム・ホンヨップ先生も「遠くから応援している私たちのことを忘れないで」と会場に呼びかけた。音楽の集い終了後は張りつめていた緊張も解けておしゃべりも急に増え、若者らしくハンバーガーが食べたいという声もあがった。

 手で見る博物館では「どうしてこんな博物館をつくったのか」、「なぜ全盲教師がつくらねばならなかったのか」との話を聴き、志の尊さに感銘を受けた。岩手マッサージセンターでは、韓国理療のルーツである日本のあん摩を全員が体験し、センター挙げての大歓迎に感激した様子だった。

 忘れてならないのは、彼らの研修旅行を助けた人々のことである。11名の通訳の大奮闘と、27名の同行者のおかげで、言葉の壁も生活上の壁も低くなっていた。また、訪問した先々で沢山の方々にお世話になり、温かい気持ちに包まれた。支援者を何人つくれるかが人生においていかに大切な要素となるか彼らもすでに知っていると思う。未来は若者の手にある。しかし、前途は厳しい。「幸せなら手を叩こう」を日本語と韓国語で交互にうたっていた日韓両国の若者が、共に手を携えて明るく平和な未来を開くことを願わずにはいられない。すでに日韓教師の会の垣根を越えた活動への参加や、メールなど個人レベルでの交流も始まっている。30年前に来日した二人の若者に宿った交流の種は、今ここに大きな花を咲かせた。今回の参加者80名の種は、いったいどこで、いくつの花を咲かせるだろうか。とても楽しみである。

<プロフィール>
重田雅敏(ルビ:しげたまさとし)
<全国視覚障害教師の会>代表。東京生まれ63歳全盲。文京盲学校で社会と重複障害を担当。趣味はマラソン。ニューヨークマラソンで韓国語通訳の杉山長氏に伴走してもらい今回の交流事業を紹介された。
<全国視覚障害教師の会>は34年前の国際障害者年に結成され、現在小・中・高・大学と特別支援学校に約100名の会員がいる。全国各地で孤立している視覚障害教師の拠り所として相談活動と研修活動をしている。<全国視覚障害者教師の会HP(https://jvt1981.com/)も参照されたい。

8日間の交流日程>
 12/24  来日
 12/25  宇都宮市立中央小学校訪問(視覚障害教師による音楽の授業見学)
    鬼怒川温泉(江戸文化体験)
 12/26  深川江戸資料館見学
    本所防災館(地震ならびに洪水体験)、都内見学
 12/27  早稲田大学見学
    第3回日韓視覚障害教師の会親善交流大会
 12/28  岩手県に移動、三陸鉄道乗車体験、津波被害と復興状況見学
 12/29午前  宮古市民を招き視覚障害者による被災体験発表と韓国青年による音楽の集い開催
 12/29午後
 12/30  視覚障碍者のための手で見る博物館見学
    岩手マッサージセンター訪問
 12/31  都内見学、帰国


公益財団法人日韓文化交流基金

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