社会には様々な状況の人が支えあって生きている。私がいることが児童にとって、普段の何気ない当たり前の一風景になってほしい。この思いが高まり、復職への険しい道を選んだ。
 その道は、先輩方が切り開いてくれた〈目が見えなくても教師はできる〉という道の先にある。そして、これから後に続く後輩たちへの道を切り開くことになる。
 全盲の小学校教師はほとんどいない。小学校の教師はすべての強化を授業しなければならないという固定観念がある。また、子どもたちの安全が保障されないという意見がある。
 誰も私が子供たちとともに笑いあい、支えあい過ごす世界の大切さを想像できない。できることではなく、できないことばかりに目を向けられ、できないだろうと突き付けてくる。それを突き破らなければならなかった。それでも戻りたかった。
 子どもたちと授業し、共に過ごすかけがえのない日々に。

 今年度は、1年生から5年生までの外国語活動、外国語を担当している。1,2年生は、学活の時間を利用して年間11時間の授業を計画している。本地域では、6年生は中学校の教員が担当することになっている。
 主に単語練習で使用する絵や文字が書かれているフラッシュカードの裏に点字シールを貼り、自分でもどのカードを使用しているのかわかるようにしている。
 また、授業の中で興味関心を引いたり視覚的にわかりやすいように絵と文字を組み合わせたりして、パワーポイントや動画を使用することは不可欠だ。
 フラッシュカードや動画などを作成するときは、一井が授業を行うために配属されている教師に、絵の様子や文字の大きさや配置、色、動画の様子などを文章や口頭で伝えている。
 また、パワーポイントを使用する際には、各シートの内容を作成して確認しながら、一井がイメージした内容で授業ができるようにしている。
 自分自身の知識だけでは児童が楽しくわかる授業ができにくい。そこで、民間の教育団体が主催するセミナーに実費で出席して指導方法を学んでいる。
 英語指導に有効な教材を購入して、児童が楽しく英語が話せたり書けるようになる授業ができるように取り組んでいる。
 授業は毎時間指導案を作成し、それをもとにサポート教師やAETとともにそれぞれの役割を活かせるように考えている。授業中の電子機器の操作や児童の状況把握、成績処理などのサポートも行ってもらっている。
 休み時間に校内を歩いて児童と話したり、交流休職を企画し全クラス一週間ずつ一緒に給食時間を過ごしている。
 日々の何気ない触れ合いが私の顔を前に向けてくれている。
「Hellow!」と、1年生から6年生まで様々な児童が声をかけてくれたり、単元の初めは話せなかった児童が授業が進むにつれ話せるようになっていく姿を目の当たりにすることで、教師としての生きがいを実感している。目が見えなくなってもあきらめずに教師を続けていてよかったと思う瞬間だ。

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