現役で活躍する視覚障害教師の実践紹介 第六弾
杉元あけみ先生 視覚特別支援学校教諭

○プロフィール
視覚支援学校高等部英語
先天性の弱視でしたが、小学校入学前にほぼ全盲となったため、学習・日常生活
では一貫して点字を使用。
腎臓機能障害もあり、20年前から、夜間血液透析を週3回受けながら仕事を続
けてきました。

中学時代に出会った英語の先生にあこがれて英語教師を目指しました。視覚障が
いのある生徒たちに一番身近で寄り添いながら、英語の楽しさを伝える仕事がで
きて、とても幸せです。
就職して3年目に盲導犬歩行の訓練を受け、以来3頭の犬たちと生活してきまし
た。わりと早期からほぼ見えない状態で過ごしてきたので、白杖歩行にも不安や
抵抗感はなかったのですが、盲学校を卒業し、大学そして社会人と公道範囲が広
がるに連れてもっと自由に、もっと気軽に歩きたいという気持ちが、私の中で膨
らんでいました。全神経を白杖や周囲の音に集中して歩くスタイると異なり、パ
ートナーの目を借り手の移動は、とてもスピーディーでリラックスでき「歩く」
ことそのものを楽しむことができます。元々の犬好きも手伝って、盲導犬との出
会いは、私に想像以上の喜びを与えてくれました。
とはいうものの、職場での盲導犬への理解は、初めはなかなかスムーズには得ら
れませんでした。視覚障がい者を対象とした学校でも、それまでに盲導犬使用者
と接した経験のある人はほとんどいなかったのです。私は、将来ユーザーになる
かもしれない生徒たちのためにも、その状況を良いほうへ変えていかなければな
らないと感じました。当時は、盲導犬は職員室へ入れることさえも許されない状
況でしたが、私たちの普段の様子を見ていただき、地道に伝え続けることで、次
第に周囲の受け入れも変わってきました。現在パートナーは、職員室の私の席の
横で待機し、授業のときには、私と一緒に教室へも行っています。「校内は独り
で歩けるのだから教室へ連れていかなくてもいいのでは?」というい意見もあり
ましたが、たとえば災害発生等非常の事態にも素早く動くためには、常にパート
ナーと公道するのは必要なことと考えます。
盲導犬使用者になるには、最長4週間、最短でも2週間ほどの訓練を受けなけれ
ばなりません。どんな職業であれ、訓練のためにそれだけの期間仕事から離れる
のは大変なことです。このため、盲導犬を持ちたくても持てない視覚障がい者も
多いことでしょう。2年前、現在のパートナー「ネージュ」を迎えるに当たり、
私も訓練に行きました。代替えなので3週間でした。過去2回は年休をたくさん
使って行きましたが、今回は学校長が県に働きかけてくださり、訓練を「業務に
必要なスキルを習得するための期間」として、研修の形で行くことが認められた
のです。障がいのある教員のニーズを理解していただけたことに、とても感謝し
ています。
「あの日だまりで眠っている犬はネージュです」などと、生徒から英文のねたに
されつつ、教室の片隅でネージュは今日もお昼寝を満喫しているのでした。


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