「豊かな共生社会を子どもたちへ」

全国視覚障害教師の会代表 重田雅敏

障害者差別解消法が施行されて2カ月が経つ。

5月30日には、文部科学省で5人の視覚障害の大学教授が「学校運営や教える側の人にも人権教育をして欲しい。」と記者会見を開いた。

3月28日から始めたインターネット署名は2100名を超え、貴重な励ましのコメントも500名から寄せられて、山口さん本人だけでなく支援する沢山の人も励ました。

さらに、4月23日の支える会の準備会をけいきとして、従来通りの用紙による署名も開始し、

5月30日までには、5000名を超える署名が集まった。

合計約7000名の署名を携えて文部科学省高等教育局私立大学部に対し要請を行なうとともに、

大臣室を訪れて要請文を低湿した。

要請に対応した方からは、「裁判中の個別の案件については成り行きを見守るしかないが、人権の尊重や障害者差別の解消については、国民的に確認されていることなので行政の立場として、きちんと取り組んでいきたい。」との回答があった。

31日には、岡山地方裁判所で山口さんの初公判が開かれた。

初公判では、次回公判の期日を確認後、原告の山口雪子さん、水谷弁護士、清水弁護士の順に意見陳述をした。

山口さんは、私に環境教育を教える場を与えてくれた岡山短大には感謝しているが、

事業を取り上げられ研究室の退去を命じられたことは、これまでの研究と人格そのものを否定されたように感じている。

私にとって授業は研究活動そのものであり、最も大切に考えているものである。

持続可能な社会や共生社会を担うこれからの保育氏・幼稚園教師のためにも障碍者差別は受け入れられないと訴えた。

続く水谷弁護士は、障害のためにできないことを不適格と決め付け、それを理由に授業や研究室を取り上げることは、障害者差別であり、人格権侵害であり、差別解消法に逆行するものであり、短大の建学の理念にも反している。

障碍者差別解消法が施行されて始めての裁判に学生も保護者も、全国の障碍者も注目していることを汲みとって欲しいと述べた。

最後に清水弁護士からこれまでの判例が示され、処分が不当であることは明白であると指摘した。

直後の報告記者会見の後、引き続き世話人の呼びかけで、「豊かな共生社会を子どもたちへ… 山口雪子さんを支える会」設立の話し合いが持たれた。

そこでは会の名称と目的、賛同人の紹介、会則の提案などがあり、大きな拍手で承認された。

これからこの支える会を中心に、山口さんの教団復帰を実現するまで、山口さんを支え、世論を喚起し、共生社会の実現を目指していくことになる。

次回の公判は、7月26日、その次は、9月13日に決まった。

支援活動を通して未来に生きる子ども達のために一歩でも2歩でも障害者への理解を広げながら、共生社会の実現を目指す大きな流れへと繋いでいきたい。

私たち視覚障害者は情報障害者である。すでに知識・経験・専門性は持っている。

欲しいのは目の代わりをしてくれるもの。状況を教えてくれる人でも、情報機器でも、盲導犬でもいい。

必要な情報さえあれば、仕事をして結果を出すことができる。情報が不十分であれば、中途半端なことしかできないことになる。

視覚障害者が教えている前例はあるのか。身近にはいない。一人前にできるのか。できるはずがない。という偏見や理解のない人たちの視線の中で、教師の会は35年間活動をつづけてきた。

実際に存在することを知らせ、日々教えることで周囲の理解を広げてきた。5名で始めたこの会も、現在では会員が100名を超え、視覚障害の大学教授も26名が確認されている。また韓国視覚障害教師の会とも交流があり、韓国にも120名の会員がいる。

一人前とはどういうことなのか。曖昧で掴みどころがない。グローバル社会・多様化社会ではもはや通用しない。

画一的な見方では、人間としての価値も教師としての価値も判断できない。

視覚障害者が活躍して何か貢献できるとすれば、それは本人の努力だけでなく、人・機器・犬などから必要な情報を受け取れるかどうかにある。

岡山短期大学側が教育の質の保証をしたいというのなら、質の良い情報を山口さんに伝えればよい。

短大側には、障害への理解が不足していたことを認め和解することを期待している。
以上


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