体験エッセイ 「内閣府の今後に期待します」

重田雅敏

それは3月末から4月初めの頃でした。「一億総活躍社会」という 耳触りの良い言葉に誘われて、山口雪子さんの問題を訴えて力を借りようと電話しました。

 ところが電話したとき、内閣府の愛想の良い女性交換手は、突然の電話に、どこに回してよいのかわからず、待たされたあげくに、障害者施策担当官?なる人が出てきました。そこで「政府を挙げて一億総活躍社会を実現していこうと言っているときに、岡山短期大学は、障害者を活躍させるどころか仕事を取り上げたんです。何とかならないのでしょうか。」というと、その担当官は、即座に

 「それは厚生労働省の管轄だからそちらに言ってください。」とのことでした。

 「勿論厚生労働省には言っていますが、首相官邸直属の内閣府は、何ができるのか知りたいのです。」と食い下がると、

 「ここは具体的には何もできない、話して気が済むなら内容は聞きます。」との答えで、こちらが一生懸命話していても、相づち一つ言わずに、沈黙したまま終わるとガチャンと切られてしまいました。

 もうそれで懲りて諦めていたら、後日、外務省の知り合いから「内閣府の政策調整官に電話してみなさい。」と言われたので、再度電話しました。

 また同じ女性の交換手が出て、回された先が、どこかで聞いた声でした。そう、この前の人だったんです。

 「先日電話した者ですが、覚えていますか。」というと、覚えていないとのこと、そこで同じ話をすると、

 またもや「ここでは何もできない。厚生労働省に電話してください。」とのことでした。

 「この前も、そう答えていましたね。内閣府として各省庁をリードするような施策や方針はないのですか。」と聞くと、

 「ここには、何もありません」とひとことでした。

 また、交換手に、「あの担当者には受け止めてもらえませんでした。」というと、今度は、一億総活躍社会実現政策担当官?なる女性に回されました。

 漸く話のできる担当者が出て来たかと話し始めると、

 「それでしたら障害者担当官がおりますから、そちらに回します。」と言われて電話が回されてしまいました。

 応対に出た人は、またまた 聞いた声でした。

 「あああ、あなたですか。またお会いしてしまいましたねえ。」とこちらが笑うと、

 相手の障害者担当官も、さすがに、また自分のところに来たかという感じで笑いました。

 笑いのおかげでお互いの心が少し打ち解けて、

 「障害者の関係では内閣府には私しかいない。ここは具体的なことは何もできない。」と内情を話してくれました。

 「なんとか話の糸口を掴もうと、これまでいろいろ視覚障害者のことについて説明しましたが、視覚障害についてどの程度知っていますか。」と聞くと、

 「よく知らない。」とのことでした。

 こんなことでは終われないと、もう一度交換手に

 「たらい回しにされてしまいました。愛想よく応対されても、繋いでいただいた担当者に相手にされず話を聴いてもらえなければ、用件が済みません。」と話すと、

 「それでしたら全体を統括する内閣官房に聞いてみます。」とのこと、

 しばらくして「内閣官房の担当者と話はできますが、担当者は話を聴くだけで、何も答えることはできないそうです。それでもいいですか。」とのことでした。

 「答えが聞けなければ電話した意味がないではないですか。」とは言ってみたものの、とにかく話だけは聞いてもらおうと、相手が出るのを待っていると、テキパキト話す、仕事のできそうな自信に満ちた声が返ってきました。感じが良く決定権もありそうだったので、

 「この電話に回されるまで、障害者担当官や一億総活躍実現担当官に、『障害者の活躍する社会を内閣府はどう実現するのか』と聞こうとしましたが、ただたらい回しにされるだけで、何の答えも得られませんでした。内閣府はいったい何をしようとしているのですか。」と聞くと、

 「そうでしたか。たらい回しになりましたか。御期待に添えず申し訳なく思います。」と言ってくれたので、

 私が「そうなんです。何とかしていただけないものでしょうかねえ。」と笑うと、相手の方も苦笑していました。

 「私は内閣府を批判するために電話をしたわけではなくて、活躍の場を奪われた障害者の救済を求めているのです。内閣府が一億総活躍社会を積極的に推進すると宣言し、また各省庁も、省庁をあげて推進を表明しているのに、差別を受けて活躍する場を奪われた障害者の女性たった一人を、行政府のどの部署も救済できないというのは、いったいどういうことなのでしょうか。」と聞くと、

 「内閣府には、具体的な手立てはありません。」。

 「では、各省庁をリードするような方針やビジョンはもっていないのでしょうか。」と聞くと、

 「内閣府としてはビジョンはありません。」とはっきり答えました。

 「それでは一億総活躍社会の推進は看板だけということですか。」と言うと、

 「残念ながら内閣府には何もできません。」との答えでした。

 「私は内閣府に期待して電話をしました。政府にも内閣府にも、もっともっと頑張ってほしいのです。期待していますので、ぜひ障害者関係についても積極的にお願い致します。」と言って電話を切りました。

 また交換手に、「内閣官房の方は、話は聞いてくれて、ここでのやり取りの状況は理解してくれましたが、こちらの期待することには何も役に立ちませんでした。内閣府は本当に、一億総活躍社会を実現する気があるのでしょうか。」と聞くと、

 「それでは大臣室に繋いでみますお待ちください。」というので、「どうせまた居留守で誰も出ないのでしょう。」と言うと、

 それでも聞いてみると言うので5分ぐらい待っていると、

 「大臣室には、誰もいませんでした。」との答えで、交換手も私も、「やっぱりですね。」と大笑いしました。

 そして、「いろいろお世話になりました。」と言って電話を切りました。

 内閣府というところはキャンペーンはしているものの、その実態はなく、看板だけの組織のように感じました。障害者の担当官がいただけでも感謝すべきことなのかもしれませんが、内閣府をはじめ、行政府のみなさんには、一億総活躍社会と、障害者の活躍する場の拡大を目指して、一歩でも前進するように、一層頑張ってほしいと思います。


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