視覚・知的併設の総合特別支援学校の現状と課題
蔚山ヘイン学校 特別支援教師 キム チャンス

 こんにちは。私はキム チャンスと申します。私は、3歳の時に高熱により失明し、大学に入学するまですべての教育課程を盲学校で履修しました。現在は韓国のウルサンという都市で教員として在職しながら視覚障害の中学生に英語、国語、道徳、コンピュータを教えています。私は、現在自分が在職しているウルサンヘイン学校の事例を中心にして知的障害児童・生徒の教育と視覚障害児童・生徒の教育が同時に行われている総合特別支援学校の実態について発表したいと思います。
 私の学校は、本来知的障害児童・生徒教育のための学校として計画されていましたが、視覚障害の子を持つ保護者の強力な要求により視覚障害児童・生徒教育も併せて担当する形で開校しました。私が住んでいるウルサンは、産業と物流の中心地として韓国で7番以内に入る大都市です。しかし、都市の規模や経済力に比べて特別支援教育及び障害者福祉の水準が相当低い方でした。障害者の保護者たちの長期にわたる要請と根気のある努力のおかげでやっと7年前の2008年になって最初の公立特別支援学校として開校しましたが、それが現在私の勤めるヘイン学校です。私が専攻した特別支援教育学では、障害児童・生徒が一般教育に完全に統合されることを理想として教えていますが、韓国では未だに特別支援学校をもう少し多く作ってほしいとの保護者たちの要求もずっと続いているのが実情です。特にウルサンには盲学校がなかったので、私もまた幼いころに故郷であるウルサンで教育を受けられず、結局9歳という幼い年に両親と離れて別の都市で寄宿舎生活をして学齢期を送らなければなりませんでした。日本の盲学校事情はよく知りませんが、韓国では盲学校に通う生徒の数が連続して減少傾向にあるので、どの地域であっても盲学校を別途設立することは易しくないと思われます。そのようなわけで知的障害児童・生徒に対する教育と視覚障害児童・生徒に対する教育を同時に担う特別支援学校という形が出現するようになり、韓国では我々の学校がその最初の事例となっています。韓国視覚障害教師の会のキム ホンヨプ会長は、このような学校形態を総合特別支援学校と称しています。公式用語ではありませんが、私も暫定的にこの用語を使用しようと思います。
 私の学校には現在46学級に合わせて250名の生徒が在学し、教員は管理者を含めて73名が在職しています。一つの学校内に知的障害児童・生徒教育部門と視覚障害児童・生徒教育部門の大きく二つに分かれて総合特別支援学校の形で運営されています。予想がつくと思いますが、生徒の大部分は知的障害児童・生徒が占めています。視覚障害児童・生徒は現在9クラスで合わせて22名の生徒が教育を受けています。視覚障害児童・生徒と知的障害児童・生徒は、それぞれ別の校舎で教育を受けており、食堂、保健室、体育館、校庭、科学実験室、通学バスなど学校の諸施設は全て生徒達が皆で共有する形となっています。
 視覚障害児童・生徒は、小学部、中学部、高等部にわたって9クラスで教育を受けています。9クラスに22名なので1クラスあたりの児童・生徒数は3名以内となり、そのうち2つのクラスはたった1名の児童・生徒しかいません。韓国における盲学校の場合、重複障害児童・生徒の比率がだんだん高くなる傾向にありますが、私の学校の場合はその度合いと割合がさらに高いと言えます。児童・生徒22名のうち視覚障害だけの子は合わせて8名で、残り14名はいろいろな重複障害を持っています。重複障害児童・生徒の大部分は知的発達に障害があるので、言葉による意思疎通が難しくその中でも一部は肢体不自由であり学科活動や移動に車いすが必要な子もいます。
 日本には、全国の学校に同一に適用される国が基準を定めた教育課程があるのでしょうか。韓国では、中央の教育部で告示する国家基準の教育課程が各学校に適用・運用されますが、盲学校といえども重複障害がない視覚障害児童・生徒は、この国民共通の教育課程に合わせて授業をしています。教科書が点字あるいは大きな活字で作られていること以外に一般教育課程と大きく異なるところはありません。もちろん高校課程では専門教科として理学療法教育の比重が増え、卒業生には按摩マッサージ指圧師資格が付与され関連職種に就業するケースが多く見られます。
 ところで、先に説明したように特別支援学校の児童・生徒の中で相当数を占める重複障害児童・生徒に対しては、一般教育課程とは別に日常生活機能に焦点をあてた基本教育課程が組まれ適用されています。よって、国語や数学、英語のような学科中心の授業よりもトイレ、歯磨き、手洗いなどの日常生活機能中心の教育を受けています。ご承知のように、重複障害児童・生徒達は、移動、食事、着席など基本的な動作でさえ困難な場合が多いので、大部分のクラスには担当教師以外に追加で補助教員が付いています。補助教員による支援は、盲学校だけで可能というわけはなく他の特別支援学校や普通学校の特別支援学級でも実現しています。
 次に、私の学校のような視覚・知的併設の総合特別支援学校体制について、私が考える長所と短所について発表したいと思います。
 先ず、長所としては、地方に居住している視覚障害児童・生徒あるいは重複視覚障害児童・生徒が家庭を離れなくても必要なサービスを受けることができるという点です。現在韓国には全国12か所に盲学校がありますが、主として大都市に位置しているためすべての地域の視覚障害児童・生徒達をカバーすることができません。それで私がそうだったように、視覚障害児童・生徒達が盲学校で教育を受けるためには、幼い時から家を出て盲学校の寄宿舎で生活をしなければならないのが実情です。特に、保護により手間がかかる重複視覚障害児童・生徒の場合、他の地域で遠く離れたところにある盲学校において両親の手助けなしに教育を受けることは、現実的に困難なことです。ところが、知的障害児童・生徒は発生率がかなり高い方なので、盲学校の機能を統合する総合特別支援学校体制は、このような立場に置かれている地域の視覚障害児童・生徒達に身近で教育サービスを提供することができるといった点が長所であると考えます。
 しかし、短所も明らかに表われています。まず、視覚障害児童・生徒の特性を正確に知り適切な教育を行うことができる専門性を持った教師が不足しています。これは単に総合特別支援学校だけの事情ではなく、韓国の特別支援教師養成体制の未整備から始まる問題と言うことができます。特に、重複視覚障害児童・生徒の教育においては、児童・生徒の一人一人の障害特性に合う教育方法を具現できる教師が実際にほとんどいないのが実情です。
 二つ目の問題点は、知的障害児童・生徒が大多数を占める学校に少数の視覚障害児童・生徒が混じっているために起こることです。学校全般の運営方法や予算支援などにおいて、視覚障害児童・生徒の特別な教育的要求を満たすには多くの制限があると言わざるを得ません。例えば、全校生が参加する学校行事の場合、大多数の知的障害児童・生徒の特性に合った内容を選択するものと決まっており、特に重複障害がない視覚障害児童・生徒達には自分たちの水準に合っていない方向で行われることがよくあります。別の例としては、視覚障害児童・生徒の基礎学力増進のための指導プログラムを企画しようとする場合にも、相対的に少数グループの視覚障害児童・生徒達だけに学校の予算が追加投入されるので、公平でないという理由で管理者側の反対に直面するケースもありました。
 このような理由で私の学校の視覚障害児童・生徒の保護者は、視覚障害児童・生徒の特性に合った教育を実現するために盲学校を別に設立してほしいという主張を継続的に提起しています。それでも所管官庁では、やはり相対的に少数である視覚障害児童・生徒のために別に盲学校を設立することは予算の効率的運用にならないという名分を前面に出して積極的には推進していません。
 以上、現在私が勤務している学校の事例を中心に発表しました。これからは、出席された皆様方の掘り下げた討論と相互交流を通じて、発表ではまだ触れられていない細かい部分にまで、お互いに有益な意見交換ができる場となることを希望します。
 ありがとうございました。
*タイトルは翻訳者が付けました。


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