感動の出会いから1年。「今度は日本で」との約束通り、第2回の日韓親善交流大会が横浜で開催されました。私は15日(木)の夕食から18日(日)の見送りまで、ずっとKBTUの皆さんと一緒でした。特に16日午後の日本点字図書館の見学には、JVTから参加できたのは重田先生・山口先生・私の3人だけでしたので、まずそのことから書きたいと思います。
日点では、概要説明の後、全盲の職員、松谷歌子さんからお話を聞きました。松谷さんは中途失明の方に展示やパソコンを教えている方で、お話の内容には私が日ごろ職場で感じていることと重なるところが多くありました。「点字を教えていると、分かるようになったうれしさがこちらにも伝わってくることがある。それが私の励みです」というところでは、大きくうなづいてしまいました。また、「健常者の中で働き続けるために大切なのは、自分にだからできることを見つけること」というところも、まさに視覚障害教師が現場で抱えている課題と同じだ、と思いました。松谷さんの場合は、「情報収集や文書作成の能率ではかなわないが、教えるという特技を活かしていきたい。障害当事者として、利用者と提供者を繋ぐことに働く意義を見出した」と言うことです。「教えることが特技です」と言い切る姿に、強さと誇りを感じました。韓国の先生からの「IT科が進む今日、点字図書館の役割とは何か?」という質問に対しては、「利用者の多くは高齢者で、点字図書を読みたい、というニーズはむしろ大きくなってきている。読書という趣味を持てたことで新しい生活の形が見えてきた。そのようなケースを数多く見ている」と答えてくださいました。私自信、用具ショップを利用することはあっても、近年日点から点字の本を借りる機会はめっきりなくなりました。点字図書館は今も社会の中で非常に重要な役割を持っている、ということを、改めて知りました。韓国のみなさんからは、そのほかにも、視覚障害者のリハビリテーションや就労状況などについて質問が出され、時間ぎりぎりまで情報交換が行われました。
その後、館内見学や用具ショップでの買い物をし、バスで横浜へ向かいました。車中では、韓国でも有名な「ブルーライト横浜」を歌ったり、日本で買いたいものについて話をしました。女性の先生たちが「夜寝るとき足に貼ると疲れが取れるやつ」とか「肩に貼る丸いもの」と言って、最初は何のことかわからなかったのですが、「休息時間」や「ピップエレキバン」のことだとわかり、とても驚きました。韓国では日本から輸入したものが売られているので、値段が高いのだそうです。また、「ロイズのチョコレートを奥さんから頼まれた」という先生もいて、日本のチョコレートが韓国でも人気があることを知りました。
続いて、17日午後の分科会について書きたいと思います。私は第1分科会「視覚障害教師の存在意義について」に参加しました。私にはこの分科会で是非KBTUの先生方に聞いてみたいことがありました。それは、成果主義が職場の人間関係に与える影響についてです。韓国に成果給があることは、イ・ナヨン先生から聞いていました。静岡県でも来年度から、教員評価の結果を給与に反映させる制度が始まります。このような制度が始まると、現在のように気軽に書類仕事を手伝ってもらったり、チームワークで生徒の指導に当たることができるのか、とても不安に思っていました。私の質問に答えてくれたのは、普通中学校で英語を教えているキム・ホニョン先生でした。ホニョン先生によると、「視覚障害のある教員は、そうでない教員と比べて、クラス担任をしていなかったり、担当している事務仕事が限られていたりするので、高い成果給をもらえる機会が少ない。結果的に、最も低いランクの給料をもらうケースが多い」とのことでした。クラス担任になれないことや事務仕事が限られていることは私も同じなので、「それでは私もずっと、一番下の成果給をもらい続けるしかないのかなあ」と少し暗い気持ちでその話を聞いていました。すると、チョソン大学のキム・ヨンイル先生が、「見えないことで確かにできないことはある。しかし、私たちにしかできないことだってある。視覚障害教師の存在意義を考えることは、教師としての存在意義を考えること。方法は違っても、子どもたちを愛する気持ち、学生たちを助けたいという気持ちがあれば生徒も保護者も、同僚も管理職も、認めてくれるはずだ」とおっしゃいました。成果給の問題は無視することはできません。しかし、いつでも立ち戻るべき場所は生徒たちへの思いです。ヨンイル先生の言葉は、一番大切なことを私に思い出させてくださいました。
私は、KBTUの先生方と話していると、韓国の現在の状況は、数年後の日本の状況かもしれない、と思うときがあります。成果給はもちろんですが、IT化の急速な進展もその一つです。キム・ホニョン先生の中学校では、黒板と紙の教科書がなくなり、電子黒板に教科書本文を映して授業をしているそうです。これは視覚障害教師にとって一見便利そうに聞こえますが、ホニョン先生によると、教科書データを利用するためには、専用のソフトを使ってネットワークにアクセスしなければならず、スクリーンリーダーでは対応が難しいそうです。授業ではアシスタントにコンピューターを操作してもらっている、と言っていました。私の勤務校でも昨年電子黒板が導入され、デジタル教科書の提供も始まっています。今はまだ黒板と紙の教科書が主流で、私は指導書に付いてくる本文データを使って授業をしています。自分なりにデジタル教科書や電子黒板を使った授業ができるよう準備しておかなければ、と思いました。
交流会の後、私は「自分にできることをもっと探してみよう」と改めて思いました。今は、同僚の授業見学をさせていただきながら、来年度の担当科目を増やせないか英語科主任と相談しているところです。また、パワーポイントを授業で使えるようになりたいと思い、セミナーやインターネットなどで情報を集めています。KBTUのみなさんとの出会いはいつでも、私にとって、自分の殻を打ち破り、新しいことに挑戦するきっかけになっています。このように刺激を与え合える仲間たちとのつながりを、これからも大切にしていきたい、と思います。