2.これまでの歩みと現在の状況
中学・高校時代で教職(特に社会科教員)への強い思いが確かなものとなった私は、社会科の教員免許が取れる大学を中心に、計4つの大学を志望することにした。とはいっても、大学卒業後、教員になれなかった場合も考える必要があり、進路指導の先生や家族と話し合った末、高校の情報免許が取得でき、視覚・聴覚障害者の受け入れに特化し、一般企業への就職支援実績もある、筑波技術大学への進学を決めた。
音声パソコンはもちろん、コンピュータについて本格的に学ぶことが初めてであったため、付いていくのが大変な科目もあったが、教職への熱意をモチベーションに乗り切った。また、同大学は、視覚・聴覚障害者が共に学んでいる(キャンパスは分かれている)ため、両キャンパス合同で行う教職科目が設定されており、聴覚障害者支援について、大変勉強になった。
3年の冬に行った教育実習は、先述の女性教員に指導教官を務めていただき、母校の盲学校でやらせていただいた(情報科の教科指導教諭は、別途つけていただいた)。
教科指導に際しては、予め生徒に了解をとった上で、pc-talkerの音を出しながら指導した。研究授業では、弱視の生徒に対してパワーポイントの使い方を指導する授業を行ったのだが、参観者が多数いる中、あまりの緊張で、一瞬頭が真っ白になってしまったことを今でも覚えている。
教科以外では、TTでの体育指導(重複障害のクラスも1時間担当した)や部活(フロアバレーボール)指導、生徒・保護者双方に向けた進路に関する講演などの時間を設けていただき、保護者の方からも、「先輩の生き生きとした姿が見れて励みになった」とのコメントをいただいた。
また、指導教官からは、自身が民間企業を経て教員になったこと、社会人経験をすることで人間としての視野が広がったことなどを聞かされ、
「教員になろうと思ったら、人間力を磨きなさい」
とのアドバイスをいただいた。
実習終了後、本来の希望教科である社会科の免許と特別支援免許を取得すべく学びを続けるか、1度就職するか本気で悩んだ。
そんな折、視覚障害者の受け入れ実績があり、社会科と特別支援免許(5領域)が同時に取得できる教職大学院(新潟県)の説明会と、視覚障害者の受け入れ実績が多数ある企業(現勤務先)の説明会が大学内で行われることになり、両方に参加した(大学院については、オープンキャンパスにも出かけた)。
しかし、最終的にどちらにするか決めきれず、結局両方応募(出願)し、両方合格(内定)した。
さあ困った。早く結論を出して、所定の期間内に辞退手続きをしなければならない。そんな時、またまた良い出会い(大学の先生からの紹介)に恵まれた。佛教大学の通信教育課程である。所在地は少々遠いが、視覚障害者の受け入れ実績もあり、社会科の免許も取得できるし、履修上の配慮についても前向きに検討してくださった。私は、教員免許が取得できる通信教育について、自分でも調べいくつか入学相談に行ったが、全て
「レポートのワードでの提出は認めていないし、試験監督等を外部委託しているので、
サポート要因が確保できない」
との理由で断られた。
そのような状況の中で出会った佛教大学は、正しく「佛」であり、就職し働きながら学ぶという決断を、大きく後押ししてくれる存在であった。
就職後は、すぐに通信教育の履修を始めた。とはいっても、いきなり中学・高校の免許を取ろうとすると、科目数が膨大になるため、高等学校の公民免許の取得を目指した(社会科の中で最も好きな科目であるため)。
履修に当たり最も苦労したのが、テキストのデータ化である。履修上の配慮は多数してくださっていたが、テキストについてはどうにもならず、ボランティアの方にデータ化を依頼することになったが、テキストデータを用意してくださっている出版社が1つだけあり、その点は幸いであった。
通信教育は、基本的に講義はなく、所定のレポー
トと修了認定試験で構成されているため孤独に感じる人も少なくないだろうが、最初から最後まで手を動かし続けるため、学びがより深まると、私は感じる。
公民免許の取得課程を修了した私は、中学校社会科・高等学校地理歴史科の免許取得を目指して再入学する前に、1度採用試験にチャレンジすることにした。
しかし、私の希望受験地である横浜市や神奈川県では、高等学校公民のみでの募集がなく、急遽埼玉県で受験することにした。しかし、何分地元ではないこと、試験対策の環境が十分に整えられなかったことなどが重なり、不合格となってしまった。
そのため、再度通信教育を受け、中学校社会科と高等学校地理歴史科免
許を取得し、横浜市での受験を目指すこととした。
2度目の通信教育では、スクーリング科目の受講が必要になるなど、全体的に履修科目が増えたが、特別大きな苦労はなかった。逆に、スクーリングを通じて学友や先生方と接点ができ、採用試験対策講座に参加させていただくなど、試験対策の環境が整ってきた。
同時に、ホームページを通じてjvtを知り、同じ障害をもつ多くの先生方や教員志望の方と接点をもつこともできた。
こうして環境が整ってくると、埼玉で受験した時にはなかった自信のようなものが出てきたと感じている。
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